第7回 配当利回りから考える、個別株投資

本日は、配当利回りから考える個別株投資のメリットについて綴っていきたいと思います。
今回は趣向を変えて、少しフランクに、できるだけわかりやすくお伝えしていきたいと思います。
貯蓄から投資へという言葉を聞いてからどれくらい経ったでしょうか。
今回の新型コロナの影響で、投資から貯蓄へと再び舵を切った方もいると思います。
株式投資に関する考え方についてお話をしていると、未だに株式投資は怖いものだと考えている方が多いように感じました。
そこで、なぜ株式投資が怖いのか理由を聞くと、
・元本保証ではない
・資産が減ってしまう可能性が高い
・過去に大きな損失を出してしまったことがある
・そもそも銘柄選びが面倒くさい
・株をやってる時間がない
・株は難しくてよくわからない
以上のような回答が多いです。
弊社はアクティビストですから、個別株に関するお話をすることが多いですが、他の金融商品に関しても、できれば手間をかけずに資産を増やしたい、資産を減らすのは絶対に避けたい、というのが本音ではないでしょうか。日本人ならずとも、たいていの人は同じ感覚だと思います。
しかし、株式投資は本当に面倒で、難しく、リスクが高いものなのでしょうか?
少し考えてみましょう。
まず、株式投資で利益をあげる方法は、キャピタルゲインとインカムゲインがあります。
キャピタルゲイン・・・株式の売買によって得られる利益
インカムゲイン・・・株式を保有するだけで得られる配当や株主優待の利益
一般的に、株式投資が難しいとイメージを持たれるのはキャピタルゲインの方ではないでしょうか。しかし、理屈はすごく簡単で、株を安く買って高く売る、たったこれだけです。株だけではなく、すべての商売の基本ですよね。
※空売りは考慮しておりません。
ただ、「今の株価が割安か否かを判断することが難しいのではないか!!」と言われてしまいそうですが、確かにその通りです。キャピタルゲインの難しいところは売買のタイミング。これにつきます。
では、インカムゲインはどうでしょう?
こちらは株を保有しておくだけで得られる利益です。株を保有しているだけなら誰でもできそうですよね。インカムゲインに関して、高配当銘柄で有名なJT(証券コード:2914)を例に挙げてお話していきます。
JTの2020年8月現在の予想配当利回りは約7%です。
予想配当利回りとは、購入した株価(現在の株価)に対して、1年間でどれだけの配当を受けることができるかを示す数値です。
つまり、配当金額が同じでも株価が高ければ配当利回りは下がり、株価が低ければ配当利回りは上がります。また、株価が同じでも配当金額が大きければ配当利回りは上がり、配当金額が小さければ配当利回りは下がります。
ちなみに、計算式は以下のようになります。
配当利回り(%)=1株当たりの年間配当金額÷1株当たりの購入価額×100
一応、計算式は載せましたが、各証券会社のスクリーニングツールやヤフーファイナンス等にも各企業の配当利回りは記載されているので、そこを見れば自分で計算する必要はありません。
それでは、インカムゲインをわかりやすく理解して頂くために、実際に計算してみましょう。
100万円を元本としてJTに投資するものとします。8月12日現在のJTの株価であれば400~500株程の保有になるでしょうか。実際には100万円ピッタリの投資にはなりませんが、今回は説明をわかりやすくするために、端数や税金等は考慮しないで進めていきます。JTの2020年8月現在の予想配当利回りは約7%でしたね。そうすると、
100万円×7%=70,000円
つまり、1年間JTの株式を保有していれば、約70,000円の利益になるということです。
※ただし、説明を簡潔にするためここでは税金について考慮しておりません。
7%の利回りって・・・大きいですよね。
比較のため大手銀行の定期預金に100万円を預けた場合を計算してみましょう。
大手銀行の2020年8月現在の金利は、概ね0.002%です。
100万円×0.002%=20円
・・・20円。100万円を1年間預けておいて20円・・・ですか。さすがに少し気の毒な金額なので、比較的金利の高いネット銀行に100万円預けた場合で計算しなおしてみます。ネット銀行であれば1年間の金利は0.20%のところがありますね。
100万円×0.20%=2000円
大手銀行に比べればもらえている方ですが、JTと比べると差額の大きさが実感できると思います。
以上のことから、株式投資を行った場合、配当利回りの方が、定期預金に預けておくよりも、多くの利益が得られることが分かります。
いかがでしょうか。
今回はわかりやすく配当利回りの高い企業と銀行を比較してお話しましたが、このように比較して考えてみると、配当利回りから考える個別株投資は、それほど大きなリスクをとらずに(現物取引を想定)、且つ利益をあげられるということをご理解いただけたと思います。
ただ、誤解の無い様にお伝えしておきますが、単純に銀行に預けておくより利回りがいいから、今すぐにでも株式投資を始めるべきだというつもりはありません。
企業の配当利回りは、企業の経営状況に左右されるため、今後も高配当利回りが約束されているわけではなく、状況によっては0%(無配)になってしまう可能性も十分あります。(日産自動車株式会社証券コード:7201をイメージするとわかりやすいと思います。)
また、企業が倒産してしまえば、キャピタルロスが発生してしまい、元本もほとんどなくなってしまう可能性もあります。
しかし、それは銀行でも同じこと。しばらく0.01%だった大手銀行の金利は、三井住友銀行が2020年4月1日から0.002%に引き下げると、他の大手銀行も追随する形をとりましたよね。今後更なる金利の引き下げや、様々な手数料を徴収されれば、実質的にはお金を預けていることで、資産がマイナスになっていく可能性もあります。
さらに、ペイオフの範囲外の資産は、100%保護されることはありませんよね。
つまり、株式投資や預金に限らず、物事には必ずメリットもデメリットもあり、すべての事柄において相応のリスクは存在し、ノーリスクでできることはないということです。
重要なことは、正しいリスクを知った上で、どの方法を選ぶことが、自分の目標に近づくのかを冷静に考えて実行に移すことです。
お金を2倍に増やしたいのに銀行に預けていては本末転倒ですよね。
家の頭金や子供の教育費に貯めていたお金を全額投資に回すのはリスクが高すぎます。
リスクがあるから、それに見合ったリターンがある。
リスクばかりに気を取られて歩みを止めてしまうと、それが自分の将来のリスクになってしまうことになりかねません。
今はバブルの時のように、銀行にお金を預けておくだけで資産形成ができる時代ではありません。
自分の将来は自分で考える時代です。
日本ではリスクを過剰に嫌う傾向がありますが、正しくリスクを理解したうえで、お金や自分の未来に投資を行って頂ければ幸いです。
個別株投資を上手に利用すれば、配当利回りは十分効率的な資産運用になり得ます。
それでも株式投資が怖ければ、利益剰余金を時価総額と同等額以上に持っていて、有利子負債が少ない企業を選べば、すぐに倒産する可能性は比較的低いと考えれます。
参考にしてみてください。