第3回 政策保有株式の問題点

今回は、政策保有株式について綴っていきたいと思います。
政策保有株式とは、有価証券報告書に記載する純投資以外の目的で株式を保有する「特定投資株式」のことであり、いわゆる「持ち合い株式」といわれるものです。
2018年6月1 日に公表された「改訂コーポレートガバナンス・コード」の影響もあり、企業が持ち合い株式を解消する動きは広がりを見せています。
しかしながら、コーポレートガバナンス・コードも万能ではありません。というのもコーポレートガバナンス・コードには法的拘束力は無く、一律にその実施を義務付けるものではないとされています。
しかし、何らかの理由で実施しないのであればその理由を説明することが求めらます。
経済合理性を欠き、ただただ関係会社と株式を持ち合っているにも関わらず、「取引関係の強化のために保有している」という漠然とした保有目的だけで、縮減や詳細説明に応じない上場企業も少ないくないのが現状です。
なぜ、会社同士が株式を持ち合う必要があるのか
まずは、会社同士で株式を持ち合うメリット、デメリットについてみてみましょう。
上記の通り、かつての日本では持ち合い関係を強固にすることで長期にわたり取引関係を維持し、外資の敵対的買収を回避したり、バブル期に大量に発行された株式の受け皿としても有効な手段であったと言えるかもしれません。
一方で、世界的な視野でみてみると、関係会社で互いの株式を保有し合うことは日本独特のものであり、加えて、株主権利の形骸化が危惧され、資金効率の悪化を招く要因になっているのではないかとの指摘もあります。
なかには、持ち合い関係会社同士で役員を派遣し合い、取締役会が本来の機能を果たしていない企業も存在します。
お互いに株式を持ち合っていますので、株主総会における議決権による監視機能が損なわれ、取締役も監査役も、関係会社同士で派遣し合っているとなればガバナンスが欠如していることが推測されます。
上記は一例に過ぎませんが、歪んだ経営を行っている企業が上場を維持しているのも事実です。
コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードといったガイドラインが導入された背景として、前述したように市場全体の危機的状態に鑑み、日本企業の国際的な評価を高め、海外からの投資を促進させるためともいわれています。
急速なスピードで成長を遂げる世界の企業
日本企業のなかには、もちろん素晴らしい企業もたくさん存在しますが、急成長を遂げる世界各国の企業と比較すると、かつての日本企業の勢いは、完全に衰えているといえるでしょう。
戦後の奇跡的な経済復興を支えてきたのは、世界に誇れる日本人の「勤勉さ」でした。
いつから日本人は「怠け者」になってしまったのでしょうか。
もちろん、日本人が仕事を怠けているとは考えていません。
ここでいう怠け者とは、「成長」に向けた姿勢のことであり、その最たるものが使途が明確に定まっていない過大な内部留保や会社間での株式持ち合いです。
会社を成長させ、市場を活性化し、日本経済の更なる発展を真剣に考えているとは思えない経営陣も多いのが現状です。
我々日本人はこの現状をしっかりと受け止め、より一層の経済成長に向けた取り組みを行っていかなければ、先進国ではなく、後進国としての不名誉なレッテルを張られることになるでしょう。
ここまで厳しいことを申し上げましたが、企業側が言わんとしていることも全く理解できないわけではありません。
内部留保を過大にためこみ、政策保有株式を持っていたからこそ好業績を維持することができているのであれば、株主だけでなく経済全体にとっても大きな意味があると考えます。
政策保有株式を持っていたからこそ得られた結果を、株主にわかりやすく説明すれば良いのです。
そうなれば我々のような株主(物言う株主)も、政策保有株式を保有し続けることに関して、異議を唱えることはないでしょう。
しかし、現実は違います。
金融庁によると、純資産に占める政策保有株の割合が高いほど、自己資本利益率(ROE)が低い傾向があるとの調査結果がでているのです。
上場企業は、株主資本を関係強化のための政策保有株式に充てる場合には、具体的な保有目的や中長期的な保有計画及び収益性やリスクについて、株主への説明をしっかりと行うべきではないでしょうか。それは株式市場から資金を調達している、上場企業の責任であり、それができないようであれば、非上場化も検討すべきです。
上場会社と非上場会社は同じではありません。責任を果たせない上場企業は、いつまでも上場を維持するのではなく、また違った道で企業の目指す未来に向かうべきです。
一番の問題は、上場会社が市場の株主からリスクマネーを供給されているにも関わらず、
経済合理性を欠いた経営を行っていることや、持ち合い関係により株主権利の形骸化を招くことです。
また、資金効率の悪化が招く非合理的な経営を続ければ、たとえ従業員が一生懸命働き会社が利益を得たとしても、政策保有株式の保有割合が過大であるために、自己資本利益率(ROE)の数値が伸び悩み、市場から過小評価を受けた結果、株価が下がり株価純資産倍率(PBR)が低水準で推移することが推測できます。
経営者は、将来の成長に大きく寄与することのない政策保有株式は早急に売却すべきであり、会社の発展のために、日々業務に精励している従業員を無碍にしてはいけません。
相互に株式を保有した結果、果たして誰がどれ程の恩恵を受けられるのか。
合理性があればしっかりとした説明ができるはずです。
経営陣は、現状把握をしっかりと行い、上場企業として責任ある企業経営を行ったうえで、成長を遂げられるよう取り組んでいただきたいと考えています。
物事には必ず2通りの考え方があり、どちらか一方が100%正しいということはありません。
しかし、目的をもって上場したのであれば、上場しているメリットを最大限に有効活用しない手はないのではないでしょうか。
政策保有株式をお互いに持ち合い、現状維持に甘んじるのではなく、それぞれが利益を追求し、資金効率の良い経営を行うことで互いに切磋琢磨すべきだと考えます。
我々Japan Actは、明るい日本の未来のため常に挑戦し続け、日本経済の発展に貢献できるよう尽力していきます。